自分で飲食店許可を取る場合の流れとポイント

ご自身で飲食店の営業許可を取られる方も多いと思います。
ここでは飲食店に特化した行政書士が飲食営業許可を取るまでの流れとポイントを解説いたします。

事前にチェックしておきたい事項

飲食店の許可は、その飲食店の住所の所轄の保健所が申請先となります。
飲食店許可の一番のポイントは、食中毒などを防ぐ衛生面での『施設基準を満たす設備』を満たすかどうかです。
そのためには保健所との連携がカギになってきます。

そして、事前にチェックしておきたいのは、

食品衛生責任者の資格

物件選び

の2つです。

関連記事:飲食店営業許可
↑こちらも参考にしてください。

食品衛生責任者の資格

食品衛生責任者養成の講習

食品衛生責任者は飲食店開業の際に必要な資格で、店舗ごとに1名必要です。

調理士や栄養士の資格を持っている者なら必要はありませんが、
そうでないなら食品衛生責任者の講習を受ける必要があります。

注意すべきことはこちらの講習を受けるには予約が必要で、
最短でも1,2週間、時期によっては1,2か月先になる場合もあります。

そして飲食店許可申請までに食品衛生責任者の資格を取る必要があります。

⚠もしも食品衛生責任者の資格が間に合わないときは

多くの保健所では、期限までに食品衛生責任者を選任する旨の誓約書があれば、申請時に間に合わなくても申請することが出来ます。
ですが当然、期限までに資格者を選任する必要があります。

食品衛生責任者選任誓約書などの書類を保健所へ提出すると、申請時に資格が無くても許可を取ることができます。

食品衛生責任者選任誓約書の見本です。

理想は資格などが全て揃ってからの申請なので、間に合わないときは必ず事前に申請先の保健所に確認や詳細を求めてください。

物件選び

スケルトンと居抜きについて

自己所有の店舗などでなければ、まずは最初に物件選びから始めることになると思います。

物件の選択はとても大切な要素です。
お店のコンセプトやスタイルにより、数えきれないほど様々な選び方があります。

どんなスタイルでも共通するのは、まずは居抜きかスケルトンかどちらを選ぶかが大きな選択になります。

居抜き飲食店の内装設備がそのまま残っている物件のこと
その分早く営業開始できたり、費用が抑えられる。
スケルトン何もなくコンクリート打ちっぱなしのような状態
これから内装工事なので、内装自由度が高い。

居抜きの場合、ご自身のお店のスタイルに合った物件を選ばれると思いますが、
許可の際の施設基準を満たす設備も意識して選択することで、余計な費用が抑えられたりします。
物件を決める際に、その物件の住所を所轄する保健所の特色をつかんでおくのも良いかと思います。

※物件の場所については、市街地なら基本的にどこでも大丈夫ですが、
深夜に営業する場合や風俗営業許可、カラオケをつける場合、店舗が大きい場合などは制限がある場合があります。

詳しくはこちらもご覧ください↓
関連記事:深夜における酒類提供飲食店営業開始届出
     風俗営業許可(社交飲食店)

物件が決まれば、その場所を管轄する保健所をチェックしましょう。
物件の住所から厚生労働省のホームページの保健所所管区域案内で確認することが出来ます。

申請先の保健所が決まれば、飲食店許可申請へ準備をしていきましょう。

1.飲食店設備の確認

施設基準を満たす設備がそろっている飲食店にするため、内装の状態において2つのパターンがあります。

居抜き物件の場合

スケルトン状態の場合

足りない設備の確認
所轄の保健所が出している『施設基準の例』などを参考に、設備を確認しましょう。
迷う箇所があるときは、写真などを取ったりして、保健所への相談をお勧めします。
保健所での事前相談
内装図面(案)をもって、工事前に所轄の保健所に、相談に行きましょう。
許可を取るための、不足する設備などについて指導やアドバイスが受けられます。

検査時に過不足があり、再工事、再検査なんてことにならない為にも、保健所への相談を活用しましょう。

2.保健所への提出書類の作成

必要な書類を作成しましょう。
大まかな書類はどこもほとんど同じですが、各所轄の保健所のホームページに必要書類や注意事項を必ず確認するようにしてください。

必要な書類

営業許可申請書
保健所に直接取りに行くか、ホームページからダウンロードしてください。
各記載例を見本に記入します。

・施設の構造・設備を示す図面(平面図)
こちらも同じく、ホームページに書類と見本例があるはずです。
調理場などの施設基準を満たす、器具、機械類、設備などの位置がわかるように書きます。
細かく詳細な図面は必要ありません。

・食品衛生責任者の資格を証するもの
食品衛生責任者養成講習の修了証のコピーなどです。

水道直結でない場合水質検査証のコピー
物件契約書や大家さん、不動産会社に確認しましょう。
水道水以外は水質検査が義務になっているので、その検査証のコピーをもらいましょう。

法人での申請の場合 

登記事項証明書
法人の場合、各保健所により必要な書類が変わることが多いので、詳細は必ず確認してください

3.飲食店許可申請(現地検査予約)

オープン予定日の2~3週間前までを目安に申請します。

『調理場、トイレ、更衣室』(客室部分以外)完成する見込みが立ったら、保健所へ飲食店の許可申請することが出来ます。つまり、申請時に未完成でも現地検査時に完成していたら申請は通ります。

目安としては、『調理場、トイレ、更衣室』(客室部分以外)の完成予定日の、1~2週間前に許可申請し、現地検査日の予約を取ります。
この時に、申請手数料を支払います。(どの保健所でも大体16,000円~18,300円くらい)

その後のスケジュール感の目安

飲食店許可申請(現地検査予約)

約1~2週間

現地検査

即日~1週間

許可完了 営業開始

4.現地検査

施設基準を満たす設備がそろっているか、保健所の担当者の方の現地検査があります。
提出した図面を参考に確認します。

区画、シンクの大きさ、手洗い器、冷蔵設備、原材料保管庫、給湯設備など

実際に水やお湯を出したり、冷蔵庫の温度計などの確認もありますので、
検査時には、電気、水道、ガスが使えるようになっていることが必須です。

また、この時『客室部分』は未完成でも問題ありません。

もしもこの時に設備に不備があれば、再検査等になることもあります。

5.許可完了 営業開始

検査に問題なければ、早くて即日~許可が下りることになります。
許可が下りれば営業を開始することが出来ます。

飲食店許可証は約1~2週間後に発行されます。
発行されれば見やすい場所に提示しましょう。

設備の確認の際、特に気を付けるチェックポイント✅

飲食店の営業許可と言っても様々な形態があり、全て同じ施設基準にはなりません。
例えば、ほぼお酒の提供のみのBARと、ファミリーレストランでは当然ながら同じ基準ではありません。

各保健所が出している『施設基準の例』などに沿って、設備の確認をする訳ですが、それはどんな飲食店にも共通する一例であり、必要に大きさ、規模に応じて、『必要な設備』が異なることがあります。

どんな規模でどんな基準になるのかは、保健所ごとに異なる部分もありますので、所轄の保健所と協力しながら開業準備を進めていくのが理想的です。

今回は共通する基準の中で比較的小規模なお店を対象とした、間違えやすい箇所や、法改正によりチェックすべきポイントを抜粋しました。

✅調理場とその他の部分とが仕切り等で区画されているか

調理場と客室の区画が明確でないなら、仕切りを導入(跳ね上げカウンターやスイングドアなどが主流)
カーテンは不可なので注意が必要です。

✅冷蔵庫に温度計はあるか

規模により、冷蔵庫は業務用でも家庭用でもかまいません。
温度計は冷蔵庫についてなくても購入したものを中にいれるだけでOKです。
ちなみに冷蔵庫は必須ですが、冷凍庫は任意です。(設置するなら温度計は必須)

✅従業員の手洗い場がハンドル式水栓でないか

食品衛生法の改正で、手を洗った際の再汚染防止の規定が変わりました。
手洗いの後、水を止めるために再度手で水栓を触る構造が再汚染に該当し、水栓はハンドル式ではなく自動式やレバー式または足踏み式などが求められています。(レバー式は肘で水を止めることが出来ると解されています。)

レバー式・自動式水栓

ハンドル式水栓

特に、居抜きでは法改正前の基準のままのことが多いので、注意が必要です。

トイレの手洗い場は設置されているか

こちらも法改正で変わった所です。
居抜きでは前のオーナーが手洗い場を、取り外していることもあるので、チェックすべきポイントです。

✅シンクの大きさは適切でお湯は出るか

シンクは2層以上が理想ですが、お店の規模(食器の数など)により1層でも構いません。
また、給湯設備も必須ではないですが、つけない場合は衛生面上、保健所の方との相談が必須です。
どちらも法改正で変わった箇所なのでよく指摘されます。(法改正前は2層シンクと給湯は必須でした)

✅食器棚などの保管設備に扉などはあるか

扉付きが望ましいですが、ネズミや虫、ほこりなどから食器などを守る構造が必要です。
こちらも法改正で変わった箇所なので、扉付き棚が設置できない場合は保健所への相談は必須です。


いかがでしたでしょうか。
規模や形態により、追加すべき設備もたくさんあり、専門家である行政書士に依頼した場合でも、保健所と協力しながら開業準備を進めていくことがほとんどです。

保健所とのやり取りがご不安な方や時間がない方は、是非一度行政書士による代行をお考え下さい。

飲食店を経営する方の一助になれたら幸いです。

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